生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の備忘録

無題10話

 彼女は今、外にいる。
システムを整備する人間として、システムの外にいる。

 内側にいる大半の人間からすれば彼女たちは“異質”な“外れ者”。それでも同時に、彼女たちがいないと
「自分がまともに生きていけないこと」は理解しているから、その存在を認めている。
 外にいるからってシステムをどうこうすることはない。“その権限がない”のではない、“その権限はあるものの、する必要/意味がない”のだ。
 外にいる人間は、内側にいる人間に比べて地位が高いという訳ではない───仕事をする分だけ得る収入が高い、という側面はあるが。
こちらに来たがる人間は
「こんな時代/世界にもかかわらず、それでも仕事をしたいと思う人間」しかいない。だから外にいるのは“何らかの事情”か“何らかの目的”を抱えている変人ばかりになってしまった。
 私だって彼女が外にいるから外にいるだけで、可能なら私も内側で遊んで暮らしたい、とは思っている。
内側にいさえすれば、仕事をしなくても
“まあまあ楽しくそれなりに”生きていけるようなシステムになった。
その反面で外は、仕事をしなければならない上、わざわざ“自身の肉体”を整備し、外環境から守る必要がある。
 それでも何故私が未だに彼女について回るのか。馬鹿馬鹿しい話だが、単純な理由だ。
大昔、最初の彼女に会った時に
「わたしを観察し続けてくださいね、絶対ですよ。」と言われて、その頼みを受理した、というだけの話。
どんな世界になっても“絶対”なんてないのに、それでも“絶対”という言葉を使って発された、子供じみた必死さにあてられたのかもしれない。今になって冷静に考えると随分損な役回りだ。
何にせよその、途中で辞退しても私に損害はないような、取るに足らない理由が私を突き動かしている/そういう風に行動させている。

 ここで私に求められた仕事は、公的には彼女をはじめとする職員のメディカルチェック、私的には記録。メディカルチェックをする職員が足りていなかったので、応募するなりすぐに採用され、配属された。
 外にいたって、そこに身を置くためには“役割”が必要なのは変わらない。存在する誰しもが何らかの“役割”を担っていて、それぞれの世界に寄与している。そうでないと内側どころか外にすらいられなくなるから。
何の“役割”も果たさない人間を許容する程の余裕は、この世界には無い。
 システムの外にいるからといって、必ずしもシステムの管理から外される訳ではない。身体が、脳が、システムに依って作られて/生かされているような人間がほとんどだ。