生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

無題12話

“ 結論から言うと、例のR-68タンクには《報告書に記載すべき異常》は見られなかった。
タンクへ伸ばされたケーブルへの接続はきちんとできているし、
栓も閉められているし、
タンク表面に穴は空いていないし、
その中身が漏れ出ている、ということもない。
それらの《報告書に記載すべき項目について》は異常がなかった。オールグリーン。
当然だ。ここは外にある上に、権限を持つ限られた人間しか立ち入ることを許されない場所。
そもそも異常が起こり得ないよう設定された場所。

 だけど───異常、とまでは言えない/至らない「違和感」ならあった。
些細なことだ。ただ単に、「タンクの表面に細かな摩擦痕があり、光沢を失った部分がほんの少しあった」というだけのこと。
それは「異常」とはカウントされない。いちいちそんな「違和感」を報告していたら、キリがないから。
だから今回も、私はいつものように「その違和感を認識しながら、ないものとして扱う」という態度を取るのだ。

 点検を終えて、基地へと戻る。「違和感」を排除し、「異常」のみを記載した報告書を上に提出する。
これ以上に指示が届いていなければこれで終わりだ。
自分の端末には届いていない。今日わたしと共にタンクの点検をした彼のところにも届いていないようだ。
ならば、と。
「ねぇ、一緒に潜ってお酒でも飲みに行かない?」ほんの気紛れに、“後輩を気遣う先輩”を装って声をかけてみた。
「……いいっすよ、俺ももうやることないみたいだったし。先輩、奢ってくれるんですよね?」
「当たり前じゃない、それくらい奢ってあげるわ。いいお店があるの」
なんて芝居がかったやり取りなのだろう。それぞれにそれぞれの役割の仮面を被って、この場所での自分を取り繕っている。私は先輩で、彼は後輩だから、そういうやり取りをすることになっている/している。
「じゃあ、中の会社前で」
「それじゃ、中で会いましょう」”