生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

家の中で一カ所だけ

 我が家の中で一カ所だけ、他の部屋と時間の進み方が異なる空間がある。
そこはトイレだ。
何かの比喩、とかではなく、本当にトイレだけ、時間の進み方が他とは異なるのだ。

 洋式の便座に座った状態で見上げると、時計が見える。でもこの時計、どうもおかしい。たまに秒針が、進むのを躊躇うかのような挙動を見せる。
1秒分進んで、進みすぎたな、と言わんばかりにまた1秒分戻る。じゃあずっと、その1秒間の間で停滞しているのかと言えばそうでもない。トイレに入り直す度に、短針と長針も異なる場所を指し示している。それでもやはり、秒針は1秒間の間で揺れ動いているだけ。
 朝の忙しい時間帯にうっかりトイレでゆっくり座って(時間的には大丈夫そうだ)だなんてトイレの時計を頼りにしようもんなら、痛い目を見る。たまに実際の時間と似たような時間を指し示していることがあるから、そういうことも起きる。

 電池の問題なのかな。でも、電池を取り替えようにも私にはちょっと届かない高さなんだよな。
同居人で時計に手が届くくらいの身長がある父親は、お小水を済ます時(男だから)時計に背を向けて、便座に向かって用を足す。お通じの時くらいだ、便座に座っているのは。
だからこそ、常に便座に座って時計を観察している私が気がついている時計の違和感に、彼は気がついていないのだと思う。

 まぁ、家の中の全ての時計が狂っているならともかくとして、トイレくらいは時間の進み方が違っててもいいかな、と思うから、父親が気がつくまでは言わないでおくことにする。