生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

心の木なんぞ、言語の炎で燃やし尽くしてしまえと思うのはきっとfury roadの観すぎか

 私がやるべきことは、心の木を、言語の力でどうにかすること、らしいです。
選択肢としては3つあるらしく、
ひとつは言語のテープで添え木をすること、
もうひとつは言語の水で根っこを潤すこと、
最後は言語を炎で燃やし尽くしてしまうこと。
少なくとも、それをやっている間は死なずに済むとのことでした。

 だから私は言葉を弄します。
本心では燃やし尽くしてしまいたいと思っているけれど、そもそも私の言葉はテープになるのか水になるのか、それとも炎になるのか分からない。だからとりあえず、言葉を弄します。

 左半身が、痺れているのはいつものことだけど、何だかいつもより痛いです。痣と、大きな擦り傷がいくつかあります。触られても感覚がないほどの麻痺なのに、痛覚だけは一丁前にあるらしく、とても、痛いです。
痛くて痛くて、泣いてしまいそうなほど。
だけど泣きはしません。そんなことでは泣きません。一番痛むのは外傷じゃないから、泣きません。
私に涙を流させるのは、心の、薬でもどうにもできない傷です。今は泣いていないけれど。

 あの人の、心臓の音を思い出します。胸に右耳を当てた時に、どくんどくんと高鳴っていた鼓動を。呼吸の音を、思い出します。はぁはぁと、熱の込もった吐息を。

 楽しかったですか?
私がどうして泣いていたか、分かりましたか?
心の澱はほんの少しだけ晴れたのは確かだけれど、心の傷は治りませんでした。
寝ても寝ても、ポカリスエットを飲んでも飲んでも。じくじくと痛みます。料理をしていて、包丁で手をざっくりと切った経験はありますか?ああいう感じの痛みです。熱くて、痛いです。

 いいですよ、私は許します。あの人のことは嫌いではないから。うん。嫌いではないですよ。

 ああ、師匠の口調が伝染ってきたのを感じます。影響されすぎですね、私はスポンジなのでしょうか。

 それでも、あの日の帰り道はそれはそれは惨めなものでした。お前を必要とする人間なんていない、と、世界が私に言っているような、そんな帰り道でした。
 どの自販機にも、どのコンビニにも、スーパーにも、自分の求めるものが置いていない。それだけでさらに追い詰められる惨めさでした。

 ええと、とっちらかってきました、私の悪い癖です。

 リア王では、三女が報われました。だけど現実で良い思いをするのは長女や次女のような人間です。現実では、追放された三女はそのまま惨めに生きていくでしょう。物語だから報われただけで。

私は知っています。どんなに正しい行動をしても報われない三女がいることを。どんなに卑劣な行動をしても、評価される長女と次女がいることを。
 そして、三女が浅知恵を身に付けて長女と次女のように振る舞っても───もっとも、気高き三女はそういうことをしないだろうけれど───報われることはない、ということを。

 私はどうやら、似非理系的な文章しか書けないようです。回りくどくて、説明臭い、そんな文章。
でもここまで書いてきて分かったのは、そんな似非理系的文章は、心の木を燃やすには不向きだということです。
私の性格的には面倒くさいから更地にしてしまえ、燃やし尽くしてしまえ、と思うのだけれど、向いていないのなら仕方がない。
水にもなれない。でも多分、テープにはなる。そうやって騙し騙し、補強していくのが向いているのでしょう。

 なんとなく分かりました。分かった気になっているだけなのかもしれないけれど、とにかく分かりました。

 私は幼い頃から鉄砲玉でした。剣道ではずうっと先鋒を務めてきました。だから余計に、当たって砕けろ精神が染み着いている。砕け散った後のリカバリー方法も知らない癖に。
何もかもに当たっては砕けてきました。そういう人生でした。だって不器用だもの。
両親の不仲に、幼い頃の私がどう対処したか分かります?
母親の浮気を隠すことと、あと家の自分の部屋の中に、牛乳パックで工作した秘密基地を作ることで対処しました。
前者は、徹底的にその証拠を隠滅することで、前の二人に戻ってくれるのではないかと淡い期待をしたからです。
後者は、本当に幼稚だなと思うけれど、今だからそう思うのだけれど、一人になりたくて、世界から隔絶されたくて、牛乳パックの秘密基地をこしらえたのです。
まぁ結局、どちらも成果はありませんでしたけどね。
他に方法を知らないから、とりあえず知っている方法を用いる。当たって、砕ける。
本当に先鋒としてはこれ以上ないくらいの精神ですが、人間としては未熟にも程がある精神です。

他に方法を知らないのならば、誰かに聞けば良かったのに。やはり昔っから、不器用で、独りぼっちだつたんですね。

道化を演じて集まってくるのは考えを放棄した人間だけなのだと、気が付けなかったんですね。そうして集まってくる人間は、私に暗い部分を求めないということも。

転勤族だったから、人と深く関わらない、人と深い関係にならない癖が身についていたのでしょう。転勤で別れることが分かり切っていたから、無駄に傷つきたくなくて、薄っぺらい関係しか築いてこなかったのでしょう。
にこにことすれば人は寄ってくるし、仲良くしてくれる。ならばそれでいいじゃないか、どうせ別れるのだから、と。

 うん。やっぱり不器用だね、お前。
寂しい人間だね。今回も砕け散って、バラバラになったけど、リカバリー方法を未だに知らないからバラバラのままなんだよね。
 寂しいね。
 うん、寂しいね。うん。考えることをやめたくて、帰ってきてからずっと眠っていたけれど、もう限界だ。眠れない。
 これ以上目を背けてはいられないぞ。向き合え。自分と向き合え。
 向き合ったところで、自分が寂しい人間であることしか分からないよ。
 それでもいい、向き合うんだ。自分がどれだけ寂しい人間なのか、きちんと認識するために。
 怖いよ。これ以上泣きたくないよ。
 お前は涙なしには生きられない運命なのだとそろそろ悟った方がいい。お前の努力は決して報われないのだから。
 そうかい。じゃあ私は泣き続けるよ。
 そうだよ。お前は泣き続けるんだ。