生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

ずっと痺れているから気が付かなかったけど、いつも遅れながらもきちんとやってきてはいたのか、感覚よ

 発症時は何も(痛みすらも)感じなかった左半身だが、今に至るまでに痛み、寒さ、痺れ、の順に感じられるようになった。
生物として生き残っていくために必要とされる感覚から優先して獲得していくのかなと思うと興味深い。

 場面は変わる。
日中に電車に乗っていた時のことだ。空いている車内、空いている座席。これ幸いと、角席に右半身をもたげて微睡んでいた。
 うとうと、うとうとと、初夏特有の、熱風と車内空調の入り混じったぬるい空気に包まれながら、そろそろ眠れる頃合いかしらと自分の眠気を受け入れようとしていたところだった。

 あれ、何かがおかしいぞ。

右腕を壁に当てて右側に重心をかけていて、左半身はノーガード、完全に右側に顔も向けている状態。そんな中、何やら左半身にうぞうぞと、肌を何かが這っているような、おかしな感覚が“発生”した。
その発生はあまりに突然で、とうとう胸まで到達した時には素で痴漢か???と思ったくらいには明確な感覚だった。絶対、誰かが今この瞬間、触っている。そう確信する程度には。
恐る恐る、ちらりと左側を覗き見た。けれどそこには誰もいない。目を閉じる前と変わらず車内は空いていて、隣どころか向かいにすら誰もいない状態だった。

はて、と。じゃあさっきの感覚はなんだったんだ、と。
微睡みから完全に覚醒した途端に消えたその感覚の正体が分からないから再現してみようと、左半身をああでもないこうでもないと突っついてみる。
うーん、やっぱりさっきの感覚とは違う。
幽霊か?いや、あまりに非現実的だ。

そしてうんうん考えてみて、もしや、と思い浮かんだ仮説がある。微睡みの中で感じた感覚の源について、身に覚え/心当たりがあった。
三、四日前にその近辺を触られた記憶がない訳ではなかった。ただその当時、自分はその感覚を当時のものとして感じていなかった。
そうしてやっと、さっきのは感覚の遅延だ、という結論に思い至った。
動物の感覚というのはフィードバックで、接触→それに対する反発→感覚信号、と、信号が脳味噌に到達することでそれを“感じる”。
でも私の左半身の感覚器官は、冒頭で述べた通り常人に比べて/自身の右半身に比べて鈍くなっている。
普段はそういう遅延は起こらないのだけれど。
というか普段も起こってるかもしれないけど、気が付くような/いちいち気にするような感覚ではないから少なくとも意識的に気に留めることはしていないのだ。

 やっぱりちょっと、いつもとは違う感覚だったのかしら。だからいつもの、他の感覚と同じように遅れてやってきた“あの感覚”に対して、自分の脳は特別な違和感を覚えたのかもしれない。