生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

重度の憂鬱症を患うと幻覚を視ることがあるらしい。だが幸いなことに、私は未だに幻覚を視たことがない

 あるはずのない物を視てしまうことを幻覚、という。

 ならば、あるはずのない物のにおいを感じてしまうことは何と呼ぶのだろうか、と思い少し調べてみた。『幻嗅(あるいは幻臭)』と呼ぶらしい。
まぼろしの、におい。予想以上にそのままの言葉だった。

 どうして突然そんなことを調べようと思ったのかと言うと理由は単純で、
“そこにいるはずのない人のにおい”を、確かに自分自身のこの鼻で感じてしまったからだ。

 私にとって、においは人間の存在そのものだ。人それぞれに固有のにおいがあって、その人を形作っている。あるにおいを嗅げば、そこにその人の存在を感じる。輪郭を感じる。

 だから、とても驚いてしまったのだ。自分の鼻が、こんなところにいるはずのない、久しく会うことの出来ていない友人の輪郭を認識したことに。