生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

最近何度か観ている悪夢に、変化があった

 そもそもその、最近何度か観ている悪夢とはこういうものだ。

 「自分はどこかに横たわっている。背中が何かに接しているような感覚はないから宙に浮かんでいるのかもしれない。というか感覚が曖昧で、自分の身体がどこにどう配置されているのかすらよく分からない。
頭はボーッとしている。
ぼやけた頭が、異変を認識する。
自分の麻痺側の、手と足の爪先から根元に向かって、手と足が何者かの手によって輪切りにされていることに気が付く。不思議と痛みはない。
切断がそれぞれの根元まで到達した時、今度は胴体を、まず縦半分に真っ二つにされて、首のところで麻痺側だけ切り離される。
そうして切り離された胴体も、何者かの手によってぶつ切りにされる。それでもやっぱり痛みは感じない。
胴体のぶつ切りが終わった後、次は顔の半分を切り取られるのだろうか、などと考えていると、予想通り自分の顔に向かって、刃が振り下ろされるのが見えた。
それに伴って、刃を握っているのが誰なのかも見ることが出来た。
それは、自分の(麻痺側と反対)側の、手だった。」

 そういう夢を、最近ずっと観ていた。痛みはないけど悪夢と言えば悪夢なのだろう。



 もう全公演終わったからネタバレしてもいいだろうと思って書くけども、先日観た舞台は人外の家族の物語だった。
人肉でしか空腹を満たせない、人外の家族。家長が定期的に人肉の調達に行っていた。
彼らは人肉なら何でも食べるけど、その中にも美味しい/美味しくないの別があるらしい。
そしてそれは、彼らが人肉の主に注いだ愛に比例するという。つまり、愛した相手程美味しく感じられる、というのだ。
 そうして、途中で登場し、不幸にも人外一家の長女と運命的な出会いを果たしてしまった日替わりゲスト(私が観た時は江口)は、長女と恋に落ち、愛され、食べられてしまう。物理的に。
 血塗れで帰宅した長女に母親は問う、
「美味しかった?」と。
長女は放心しながら返す、
「美味しくてたまらなかったわ」と。
 美しい、と思った。
愛せば愛す程に美味しく感じられてしまう。
美味しいからといって食べてしまえば愛した相手は死んでしまう。
その間に生じる葛藤を、美しいと思った。



 話を戻そう。最近観ている悪夢に変化が生じたのだ。大体の流れは変わらない。私の麻痺側の身体がなくなっていくのは変わらない。
ただ、その方法が変わった。
それまでは、手と足両方いっぺんに、爪先から輪切りにされて、なくなっていった。
 でもその夢では、手か足か、どちらが先かは忘れたけれど、どちらか片方ずつ、無秩序に/ランダムに、それでも方向的にはやっぱり爪先から根元に向かって私の肉がなくなっていった。
その断面は、刃物で切った時程綺麗ではなく、ガタガタだった。そして、それまでとは違って、骨だけが切断されずにそのままになっていた。
手足の消失が根元に到達すると、次は胴体。だけどこれもまた少し違っていて、最初に真っ二つに分ける行程が消えて、もう片方の胴体とくっついたまま、麻痺側の胴体の肉だけが削げるようになくなっていった。
そうして残すは首から上になった時、私は切断者の影を視認する。この夢では私の(麻痺側と反対)側の手ではなかった。そしてそれは、単なる切断でもなかった。
“食事”だった。捕食者の口元は私の血で汚れていた。
それが“食事”であることに気が付いてから、肉が無秩序に消えていった理由に思い至った。捕食者は、美味しいところを後の楽しみにとっておきながら、私の身体を食べ進めていたのだ。
 そして、本当に最後のお楽しみ、一番美味しいところを今から食べようとしている。頬肉、目玉が配置された顔を食べようとしている。
 どうせ最後だし、いつもと違うし。捕食者の顔を見ておこう、と思った。
その瞬間、夢の中の身体から、意識だけが飛びそうになる。現実に引き戻されそうになる。夢から覚めようとしているのだ。
それでも今まさに私の顔をかじろうとしている捕食者の顔を必死に捉えようとする。
霞む視界にぼやける意識。

私が最後に捉えたのは、口の周りを真っ赤に濡らした江口の姿だった。

 いや、おかしいだろ、と、目が覚めてから自分で自分の夢に突っ込んだ。それはもう、全力で突っ込んだ。
だって、舞台上での江口は食べられる側であっても食べる側ではなかったのだから。相手を人間の方法で愛した結果、人外の方法で愛されて、その愛の末に食べられた人間だった。
 だから、おかしい、と思った。どうしてだろうと考えた。まぁ、深く考えなくても理由は2,3思いつくのだけれど。それを理由として認めたら負けなような気がするから、もっとまっとうな理由はないだろうかと考えた。


 そして今に至ってこれを書いている。やっぱり、結局最初に思い付いた以上の理由/言い訳は思い付けなかった。