生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

おはなし1話

 ある日、人間は融点を下回った。

 

 

 “わたし”は“わたしたち”になって、今までもそうしてきたように、惑星の資源を消費しながら他の生物たちを牽制し、再生と増殖を繰り返すだけの毎日を送るようになった。

あまりにも殖えすぎた時には、わたしたちの中で古く、もうほとんど役に立つ挙動をしなくなった一部をわたしたちで分け合って食べる。

 わたしたちは行き着くところまで行き着いて、惑星の身体を食いつぶしながら生きていた。宇宙の外へと出向くなんて思考は、わたしたちがわたしたちであるがために、湧いてくる度に多数決で打ち消されてきた。

わたしたちはこの惑星から出て行く気はなくて、この惑星と共に心中するつもりでいる。

 

 この惑星が1回転するのに5,000時間かかるようになった頃、外宇宙から使者がやってきてこう言った、

「この星の主権を譲ってくれないか」と。

応じなければ武力によって制圧することも辞さない、とも付け加えて。

その時のわたしたちには、もはや惑星内の他の生物たちを牽制するために必要な分だけの力しか残されていなかったから、二つ返事で承諾した。それから、わたしたちの星は“植民星”となり、宗主星の支配下に置かれて今に至る。

 

 今わたしたちは、わたしたちの性質を活用して資源を宗主星に供給している。

わたしたちは既に完成し、“ひとりの旗人を参照して殖え、一定程度の時間を積み重ねて末梢に至った個体を消費して、代謝回転する”性質を有するようになった。

その性質を、宗主星は面白く感じたようで、“わたしたちが今に至るまでの歴史”を創作し、殖やした上で自分たちに提供するようわたしたちに命令した。

 わたしたちがこうして過去について語っているのには、そういった理由がある。