生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

おはなし4話

「痛い!痛い!」

床にいる方の私の叫び声で、ふと我に返った。

そういえば、どうして私たちは知らない場所にいるのだろう。

どうして、私たちは自由に動き回れないのだろう。

どうして目の前にいる私の手首に点滴が、股の間には管が繋がれているのだろう。

不思議なことに、私はここに至るまでの経緯を何も思い出せない。いつも通りに家の布団で目を瞑って、しばらくしてから目を開けたら、天井に背中が貼り付いていた。

 話を目の前の人間に戻そう。

彼女は頭を痛めているようだ。痛みに何かを書く余裕も奪われているらしい。

そして、片手に握った、オレンジ色の釦を力いっぱいに押し込んでいる。釦を押し込みさえすれば今感じている痛みが和らぐのだとでも言うように。

接続のあまりよくなさそうな釦がようやく反応して、彼女の枕元に設置された機械が甲高い機械音を響かせる。誰も彼女に目もくれない現状であっても、その機械音は救難信号としての役割を果たしそうであった。

しかし問題もある。その音は、あまりにも甲高く、私たちの頭をグサグサと刺し始めた。助けが来るのと、私たちの頭が音で壊されるのと、どちらが早いだろうか、回る気力も失って、ボーッとした頭でそんなことを考えていた。

頭蓋が軋む程甲高い音を受けて、私の思考はどんどん霞んでいった。

 

 既知感のある感覚。視界が揺らぐ。油断すると意識が飛んでいきそうになる。でも、私には、その意識をつなぎ止めておく理由が見当たらなかった。もう、飛んでいきたいなら飛んでいけばいいんじゃないだろうか、とすら思って。

 

 すると、前触れもなくふわりと、外界からの刺激が全て消え去って、全身が深い闇に放り込まれた。