生まれたてのこじか日記

短期記憶がすぐ消える暇人の肉体から乖離して独立した“書き手”という非実在存在の備忘録 この内容が本当か嘘かは“書き手”自身にも分からない

さよなら、幸せな記憶

 今を生きられない私は、過去に生きる。

 

 昼御飯を食べた後、何だか眠くなった。

薄いカーテンは閉め切ったままに、窓を開け放つと、薄い光と風が部屋に延びてきて。私は下着姿でベッドに倒れ込み、意識を枕に委譲した。

 

 夢を見た。

 目が覚めてから、私もまだまだ青いな、と呆れる類の夢だった。それは過去の光景が、もしそのまま継続していたなら、というifの夢で。私はその夢を当然のように忘れるだろうと思ったし、その夢は二度と見られないものだという予感が頭を過ったので、手の指の間をすり抜けてしまう前に書き留めてしまおうと思った。

 

 呆れるくらい、幸せな夢だった。

同姓にしては背の高い友人と並んで歩いていた。時たま目を合わせて笑い合い、それ以外には何もなかった。共犯者の笑顔/声/匂いが、自分の五感をくすぐり続ける。達人たちによる餅つきのように、小気味良いビートが刻まれる。道はひたすらまっすぐ伸びていて、私たちは永遠に、この二人だけの幸せの中に生きられるんだろうな、ということを、言葉にしなくても何となく理解できた。

 ただそれだけの、夢。

 

 目が覚めて、夢の続きを見たくて、もう一度寝た。

 

 ついさっきまでの夢とは全然違うけど、それもまた幸せな夢ではあった。

今いる部屋のように、電気は消したまま、外から光と風が延びている部屋で。今度は異性と共にいた。

私たちはろくに話さない。相手の少し高い体温を、手指と足指でなぞる。外から生き物の声が聞こえてくる。むせかえるくらいの刺激が五感に突き刺さってきて、頭がふらついた。これもまた別の秘密で、共犯関係のような気がした。

 他には内緒のキスをして、また夢が終わった。

 

 二つの夢は、どちらも多分もうじき頭の中から消えてしまうだろう。消えてしまう前に、脳が一度だけ見せてくれたのだろう。

 目覚めて少し呆けた後に、それらがこの先の未来では決して叶わぬものであることをはっきりと感じて、目を腫らした。